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和敬清寂のひととき

育英サタデースクール ポートワシントン校 小学部 書き初め大会

1月10日、育英サタデースクール ポートワシントン校にて、新年最初の伝統行事である小学部書き初め大会が行われた。児童は高学年から順に多目的室に集まり、気持ちを新たに筆を取った。 どの学年もまずは講師の手本を見学し、筆や硯など道具の使い方や扱い方を一つひとつ丁寧に教わりながら文字に向き合った。

育英サタデースクールでは、海外にいるからこそ得られる学びを大切にし、日本文化を表面的に体験するのではなく、「なぜそうしてきたのか」「どのような意味が込められているのか」を考えることを教育の柱としている。書き初め大会も、文字の上達を目的とする活動ではなく、日本人が長く受け継いできた所作や心のあり方に触れる機会として位置づけられている。筆を取る前に姿勢を整え、教師に挨拶をしてから始める一連の流れに、場を大切にし、自分自身を見つめてほしいという思いを込めて指導する。

指導にあたった書道家の浅井早苗先生は、「字は静かな空間の中で心を落ち着けて書くと良いですよ」と子ども達に話した。海外で育つ子どもたちにとって、日本文化の中にある「間」や時間の流れを、説明ではなく体感として受け取ることは、日常とは異なる貴重な経験となった。

書き初めを始めると、どの子もまず筆の持ち方に悩んだ。普段鉛筆を立てて書くことをしていない子ども達にとって、筆を立たせて書くというのは不思議な体験だったようである。一画一画書くごとに、筆の流れが上手くはらいに出せたり、思ったより太くなったり細くなったり、墨がかすれてしまったりと、やってみて初めて体験できることが多く、子ども達からは「けっこう難しい」「ここ、もう少しこっちまで書きたかったのに」などと悩んだり考えたりする声が聞こえた。中には墨の匂いに着目し、「先生、墨ってツンとした不思議な匂いがしますね」と感想を述べた子もいた。こういった感覚を、その場だけの特別な時間として終わらせず、日々の生活と結びつけて考えることも、同校が文化体験に大切な意味を見いだしている理由の一つである。書き終わると、担任の先生に「お母さんと練習したから上手にかけた」「あと、もう一枚書きたかった」「またやりたい」などと話していた。

サタデースクールに通う子どもたちは、平日はアメリカの学校で学び、週末には日本語で学ぶという、二つの教育文化の中で生活している。その中で、自分の感じたことを言葉にし、立ち止まって振り返り、文化や習慣の背景に目を向ける力は、将来さらに多様な価値観と出会ったときにも、自分を支える軸となっていく。

書き初めは、新しい一年の始まりに、立ち止まって自分自身を見つめ、日本文化に息づく静けさや敬意に触れる時間となった。こうした経験の積み重ねが、子どもたちの感性を育み、多文化社会の中で自分らしく生きていく力へとつながっていく。