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金田 萌永(かねだ もえ)さん<陶芸家>

Moe Kaneda (ceramic artist)

異国で育んだ感性を、伝統工芸の世界へ

卒業生インタビュー:ようこそ先輩

プロフィール

金田 萌永さん

1997年 東京都生まれ、幼少期を香港、アメリカで過ごす
2007年~2010年までNY育英学園全日制小学部に在籍
2020年 武蔵野美術大学 造形学部 工芸工業デザイン学科 卒業
以来、各地の陶芸展に出展・入賞
2022年より毎年個展開催
令和6年能登半島地震 工芸作家チャリティーオークション 出品
(一般社団法人)日本気球連盟の記録飛行表彰記念品を制作
現在 日本工芸会正会員 滋賀県内にて作陶
詳細はぜひホームページをご覧ください。
[HP]www.moekaneda.com/
[SNS]http://instagram.com/moe_kaneda_

NY育英学園に在籍していた期間(学年や在籍部門)を教えてください。

アメリカには2007年から2012年まで住んでおり、そのうちの約2年半(2007年~2010年)、NY育英学園の全日制小学部に在籍していました。4年生の2学期に編入し、小学部卒業まで通っていました。

 

ご退園後の進路や、その進路を選んだ理由について、差し支えない範囲でご紹介いただけますか?

中学3年生の春に日本に本帰国しました。その後、都内の高校、大学は武蔵野美術学に進学しました。大学卒業後は滋賀県に拠点を移し、陶芸家として独立しました。
 
現在は「練込」という日本の伝統的な陶芸技法を使った作品を制作しています。大学生のときに美術館で偶然、人間国宝の先生による練込作品に出会ったことが大きなきっかけでした。その美しさに強く惹かれ、独自に試行錯誤を続けてきました。
 
幼い頃から細かい作業やものづくりが好きだったこと、そして日本の伝統文化への憧れもあって、今の道につながったのだと思います。

 

学園での思い出の中で、特に印象に残っている授業や行事、先生とのエピソードがあれば教えてください。

日本の教科書の内容の学習以外にも、書道や俳句の授業、田植えや餅つき大会など、日本の文化や行事に触れる機会が多くありました。特に印象に残っているのは、日本から切り絵のアーティストの方がいらして、ワークショップを行ったことです。当時のNY育英学園では、卒業制作として学年全員で一つの作品を作るのが伝統だったのですが、私たちの学年はその影響で、切り絵状の大きな壁画を制作しました。

  • 2009年度卒業生たちの作った切り絵

  • 切り絵は、今もNJ校東門入口近くの壁に飾ってあります。
    学園訪問の際はぜひご覧ください。

 

学園で出会った創作の楽しみが今の私を形づくる
NY育英学園で学んだことの中で、今のご自身にとって特に役立っていると感じることは何ですか?

遠足でよく訪れていたメトロポリタン美術館や、修学旅行で行ったスミソニアン博物館など、幼い頃に世界の芸術文化に直接触れられたことは、今思うととても貴重な経験でした。
 
世界中の芸術品が数多く並ぶ中で、日本の美術工芸品も並んでいて、それらが海を超え時代を超え世界中の人たちに感動を与えているのが、子供ながらにとても印象的でした。
 
その体験が、日本の伝統や芸術文化を未来に伝えていくような仕事に携わりたいと思うようになった、最初のきっかけのひとつでした。

 

そのほかニューヨークでの生活で印象的だったこと、海外での生活はその後の日本での生活にどのような影響を与えたと思いますか?

毎年家族でニュージャージーのバルーンフェスタを見に行っていました。日の出とともに膨らみはじめ、風に乗って次々と空へ飛び立つ熱気球にとても憧れて、いつかは乗ってみたいなと思うようになりました。気球について調べていくうちに、日本ではかつて学生や冒険家が熱気球を自作して空を飛んでいたという本を読み、ものづくりが好きだったということも相まって、いつか自分の作った気球で空を飛びたいと思うようになりました。
 
その影響で帰国後、高校生の時には仲間とともに3年間かけて小型の熱気球を制作しました。その後、もっと広い空を飛んでみたいと思うようになり、全国各地に遠征してフライトしたり、競技大会にチームの一員として参加したりしています。現在は、滋賀県の気球の飛ぶ街にアトリエを構えています。

 

最後に、在校生や保護者の方々、また入学を検討しているご家庭へメッセージをお願いします。

帰国後、日本の学校に無理なくなじむことができたのは、NY育英学園での生活のおかげだと思っています。また、当時の同級生たちもそれぞれの分野で個性豊かに活躍していて、大人になってからも近況を聞くのがとても楽しみです。
 
異国の地で学びながら、日本の文化の素晴らしさに改めて気づけたのは、私の人生にとってかけがえのない経験でした。

 

金田萌永さんの陶芸作品

「練込」とは、異なる色の土を組み合わせ、その断面で模様を描く日本の伝統的な陶芸技法です。
この技法をもとに、私の作品は小さな金太郎飴のようなパーツを一つひとつ作り、それらを組み合わせることで緻密な模様を描いています。

昨年春に大阪のギャラリーで展示を行った際、NJからのお客様がお越しになり、作品をご購入いただきました。かつて私が暮らしていた街へと作品が旅立って行ったことが、とても嬉しく心に残っている出来事のひとつです。

 

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