Mizuho Uchiyama
3歳からクラシックピアノを習う。
高校2年在学時、「全国高校生音楽賞 作曲部門」で4,000を超える応募作品中、2位を獲得。
ジャズに出会い、ボストンのバークリー音楽大学を卒業。
以後、ミュージシャン、ピアノ講師、レコード会社勤務、音楽イベントプロデューサーなど多岐にわたり、音楽と関わる日々を送る。
NY育英学園では、2010年から現在までピアノ講師、全日制小学部音楽専科を2012年度から4年間務める。
最近ではNPO団体「JazzPacific」を立ち上げ、アジアのジャズミュージシャンの世界発信をサポートする活動を行っている。
<学園での担当>
・育英アフタースクールニュージャージー校 ピアノ講師(2010年12月~現在)*2020年よりオンラインピアノ講師
・NY育英インターナショナルスクール全日制小学部音楽専科(2012年4月~2016年3月)
ボストンのバークリー音楽大学を卒業後、ニューヨークへ移りジャズミュージシャンとしての活動を本格的に始めました。沢山の先輩ミュージシャンとの交流、演奏を通じ、ジャズへの敬愛を深めていきました。ニューヨークは世界中のトップクラスのミュージシャンが集まる場所で、毎日ハイレベルな演奏に触れられる最高の環境でした。音楽的な刺激だけでなく、人との出会い、文化の多様性、プロとしての姿勢など、今の教育にも大きく活きています。
ピアノの指導は自然発生的に始まり、生徒が喜ぶ姿を見て、自分も嬉しくなる。その積み重ねの中で、教育が自分のもう一つのライフワークになっていきました。
ミュージシャンや音楽イベント・レコードのプロデューサーとして「どうすれば人の心を動かせるか」を常に考えてきた経験は、授業にも直結しています。レッスンでは、単に教えるだけでなく、生徒が自然に惹き込まれる“体験”を一緒に作り出すことを意識しています。
全日制小学部で歌を教えるときには、歌詞をよく理解して表現するように指導していました。卒業式と入学式で在校生から贈る英語の歌に、マライア・キャリーの「HERO」を選んだ時、「結局ヒーローはどこにいる?」という質問に、小学1年生が手を挙げ「自分の中」という答えを言ってくれました。音楽を通じて子どもたちがそれぞれ、心に映し出される自分の中のヒーローをこの歌に込めて歌ってくれ、力強いメッセージとなりました。
歌詞のない音楽も、音から広がる景色を一緒に見て、ストーリーを奏でるよう指導します。
生徒と一緒に音楽で色々な国を旅行したりもします。
クラシックピアノからスタートし、独学で作曲を始め、ジャズに傾倒しジャズ畑から音楽業界を見る立場になったことから、自然と指導法も柔軟になりました。自分が子どもの頃「こう教わっていたらよかった」と思うことを、「今は宇宙語に聞こえるかもしれないけど」と生徒の耳に徐々に吹き込んでいく。私がジャズに出会ったとき、私の探していた音はこれだ!と思った経験から、単純に音楽は面白い、ピアノでこんなこともできるんだ!という驚きや感動を生徒にも感じてもらえるよう、生徒の知っている曲を即興アレンジで弾いたりもします。
仮に生徒が音を間違えて弾いたとしても、その流れや瞬間のハーモニーがとてもおいしく聞こえたときは、「いいね〜!」と言ってしまいます。作曲者や編曲者の意図の伝達方法として楽譜があり、それを読み解くことで良いサウンドを体験し学ぶのが通常のプロセスですが、では譜面にない音を弾いた場合何が起きるのか、そこには思わぬ新しい世界が広がることもあるという、楽譜通りじゃない=「失敗」ではなく、「創造」につながる可能性があることを知ってもらうということです。
生徒自身がそこから自分のメロディーを繰り広げてもらってもいいのですが(それがジャズの醍醐味ですが)、基礎の段階では、まずは作曲者や編曲者の意図をリスペクトしようと、譜面に立ち戻ってもらう。極論、音楽に間違いはない。ただ、「いい音」じゃない場合があるから、まずは「いい音」を知ろう! そのためにはまずは譜面通りに弾くのが近道。なぜ作曲家や編曲家はここでこの音を選んでいるのかが理解できると、その音を弾く意味がわかるし、自分で「創造」するときにもそのアイディアが使えるかもしれない。また、譜面に書かれた音楽を他の人と一緒に演奏するときには、譜面通りに弾くことでいい音になるはず。だから譜面通りに弾く力をまずはつけよう、というお話をしたりもします。
私がジャズを知ってから、音楽の世界がぐんと広がり、ジャンルを問わず好きな音楽に無限に出会えているため、この楽しさを分かち合いたい一心で指導をしています。
曲の途中でおいしいハーモニーやフレーズに出くわすと、いちいち反応して味わっている私を生徒が微笑ましく見ているという図も多々あったり。自分でもこういう先生になるとは思わなかった、けれども、音楽を純粋に楽しんでいる先生から習うというのも面白いのではないだろうかと、そんなことを思ったりもします。
ニューヨークで培った“自由で創造的な音楽観”と、日本式の教育現場で育んだ“丁寧に寄り添う姿勢”。その両方をバランスよく融合させることで、音楽を通して「感じる力」「自分を表現する力」を育てたいと思っています。
![]() 左から4番目のキーボード担当 |
![]() |
![]() 日本パネルモデレーターを務める(右上) |
自分の思いをうまく言葉にしたり行動に表したりすることができない子どもでした。
幸いピアノが弾けたので、学校で合唱のピアノ伴奏をする時だけは自信が持てるような感じでした。学校から帰って、表に出せない自分の気持ちを発散するかのようにピアノを弾き、気がついたら作曲もしていました。音楽は人と繋がるためのツールだと思い始めたのもその頃です。「音楽で自分を表現したい」、というのが夢だったと思います。
世界の一流ミュージシャンが集まるNYで、生の演奏を聴いて、耳を育てよう!
コロナ禍にニューヨークからテキサスへ移住し、その後NY育英学園ではオンラインでピアノレッスンを行っています。オンラインの指導では言葉で的確に伝えることが重要で、そのスキルを日に日に身につけ、対面レッスンと変わらないクオリティーのレッスンを提供しています。
ニューヨークで教えていたときは、生徒が一流のミュージシャンたちの演奏や他の芸術にいくらでも触れられる環境にいることがものすごい強みだと感じていました。演奏力を高める上で「耳を育てること」は何よりも大切です。ですので、レッスン以外にも生徒にはぜひ一流のミュージシャンの音をできるだけ多く、生で聴いてもらいたいと思っています。目の前で奏でられる音楽からは、表現者が音に込めた一瞬毎のエネルギーを肌で感じることができ、録音では得られない学びがたくさんあります。
生徒たちはそれぞれ異なる文化や教育背景を持っており、音楽の捉え方やアプローチも多様です。中には、リズムを感覚的に体で感じ取るタイプの生徒もいれば、譜面からの情報を頭で処理しようとするタイプの生徒もいます。どちらにもそれぞれの良さがありますが、自分の中で音楽が鳴らないと弾けないので、視覚で読み取ったものを音楽として自分の中で鳴らす、その過程を共に踏みます。
このように多様な生徒と向き合う中で、文化や感性の違いを理解しながら、それぞれに合った伝え方を探ることが時に難しいなと感じる瞬間ではありますが、文化や教育背景が異なっても音楽を楽しむ気持ちは世界中どこでも同じだと感じています。
毎回のレッスンで生徒が自信と喜びを感じているかに常に注意を払っています。
うまく弾けたこと、頑張って練習をしたこと、小さなことでも気がついて言葉にして伝えることを心がけています。
生徒のつまずきも、共感して、どうやったらうまく行くようになるかを丁寧に伝えます。
生徒の目線に立ち、心情に気を配りながらレッスンを進めていきます。
譜面に書かれたことを、頭で考えすぎてしまう生徒には、歌ったり、曲の視覚的イメージや情景(これはどの生徒にも大事)が見えるような指導をします。
今何を弾いているのかをわかって弾くことはとても大切で、分析する力、曲を理解して弾く力も早くから鍛えます。
伝えたいことが沢山あり過ぎて、ついついレッスン時間が延びてしまうことも。毎回、楽しかった、良かったと思えるレッスンにすること、また練習のモチベーションが上がるレッスンをすることが使命だと感じています。
音楽は一生の友になります。特に子供の頃に培った音楽の素養は、文字通り一生自分の中で生き続けます。私の母は認知症を患いながら、何十年ぶりにピアノの前に座って、ハ長調のスケールを正しい指遣いで何度も弾いていました。
将来、音楽を職業とする人はほんの一部ですが、プロとして音楽を続けなかったとしても、何歳になっても楽器演奏を楽しむことができます。また何歳からでもピアノを始めることができます。アメリカ人の生徒では小学生以上になってからピアノを始める人も多くいます。
私はピアノを弾くことで、心が落ち着いたり、笑顔になったり、頭の中に気持ちのいい風が吹き込まれたりと、音楽の力によって心身の健康が保たれるのを実感しています。それができるのは、始めに基礎をきちんと習い、自分が楽しめる技量を身につけさせてもらえたからです。
まずは自分が楽しみたいから練習をする。本番で楽しみたいから。好きな曲を弾いて楽しみたいから。音楽の力を実感できるようになるために、必要な技量を身につけてもらいたい。そう願いながら、これからもレッスンに力を注いでいきます。
様々な習い事で忙しい子供たちや、日々の生活に追われる中で少しでも自分の時間を持ちたいと思われる方に、ご自宅で気軽に受けられるオンラインレッスンを便利に使っていただきたいと思っています。
毎年1月に行われるNY育英学園音楽発表会に、オンラインレッスンからも生徒を送り出しています。曲を仕上げる期日が決まることで、目標設定ができ練習のモチベーションに繋がります。また本番での演奏は、毎回貴重な経験となり、自信となります。ぜひこういった機会を利用して、音楽とより親しんでいただけたら良いなと思います。
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